中国政府もチラつく、ミラン買収の真相。新オーナーで来季はどうなる? (3ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 では彼はどうしたか? まず法人税の安いルクセンブルクにロッソネリ・スポーツ・インベスティメント・ルクスという会社を設立し、アメリカのヘッジファンド、エリオットから融資を受けた。それをベルルスコーニへの支払いの一部に充てたのだ。

 このときエリオットから借りた金額は3億ユーロだが、金利は10%とべらぼうに高い。実をいうとリー・ヨンホンはすでに残りの資金も調達していたのだが、中国には外国への資金の持ち出し額に厳しい制限があり、一度にそれだけの金を払うことができない。目的達成のためには致し方ない措置だった。

 もちろん、このやり方には危険がある。リー・ヨンホンが期日までに返済ができなければ、エリオットは彼の資産を差し押さえることができる。つまりミランを差し押さえて転売することも可能なのだ。リー・ヨンホンも、さすがにそんなことはしないだろうが......。

4月の半ば、ついに株式譲渡は完了し、ベルルスコーニの持ち株会社フィニンベストがロッソネリ・スポーツから約束の金額を受け取った。これでみんな幸せ、めでたしめでたしとなったのだろうか?

 中国人新オーナーが手にしたのはロッソネロではなくロッソ――つまり赤字のチームだ。ヨーロッパにはUEFAが決めた有名なフィナンシャル・フェアプレーという規則がある。平たく言えば、赤字のあるクラブは、それ以上の赤字を増やすことになる新たな選手の購入をすることができないのだ。

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