「終わったGK」カシージャスがポルトで復活。苦い記憶も脳内変換? (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 それは悟りの心境に近い。10年ほど前に、カシージャスにインタビューしたときのことだった。

「試合の中で、スーパーマンに変身した気分になるときがある」

 カシージャスは本気で言った。ヒーロー漫画の主人公のように、ポジティブなイメージで"悪"に立ち向かえるという。つまり、たとえどんな苦難に襲われて、不利に立たされたとしても、最後は必ず逆転できる。彼はそう信じられるのだ。

 1999年のワールドユース(決勝では黄金世代の日本と対戦。現在のUー20W杯)で、カシージャスは大会を通じ、控えGKだった。そこで、「その挫折がバネになったのか」と話を向けたときだった。

「僕はずっとレギュラーだよ」

 彼はその一点張りだった。記録を見せても、「記録が間違っている」と頑固に態度を変えないほどに――。一流アスリートは、記憶をもポジティブに上書きできると言われる。そこまで図太くなければ、身を叩きつけるような批判と重圧を耐えられない。不安や迷いを、とことん排除するのだ。

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