シャペコエンセが事故から初の公式戦。2チーム体制で7つの大会に挑む (3ページ目)

  • 沢田啓明●文 text&photo by Sawada Hiroaki

 後半の立ち上がり、ジョインヴィーレが右サイドを突破して鋭いクロスを入れ、FWが至近距離からシュート。この試合で最大のピンチだったが、GKエリアスが驚異的な反応で防いだ。昨年、今は亡きGKダニーロが奇跡的なセーブで幾度となくチームを救ったが、その伝統は今年も生きているようだ。

 シャペコエンセは70分、左からのFKをゴール前で21歳のFWローレンシーが合わせたが、相手GKの好守に止められた。

 その直後、「昨年の飛行機事故で71人が死亡したことにちなみ、今シーズンは毎試合、71分に1分間の拍手をお願いします」という場内放送が流れた。試合自体は止まらず、選手はプレーを続けたが、観衆が皆、立ち上がって拍手を続ける。「ヴァモ・ヴァモ・シャペー!」(シャペコエンセ、頑張れ!)というチャントも起きた。

「71分時点の拍手による追悼」。世界サッカー史上でも極めて珍しい光景だった。

 これでチームが奮い立ってゴールを奪うことができれば劇的な展開だったのだが、そううまくはいかない。その後は両チームとも決定機を作れず、結果はスコアレスドローに終わった。

 この日のシャペコエンセは、粘り強い守備こそ健在だが、攻撃がアイデア不足。選手同士の連係もまだ不十分で、パスの出し手と受け手の呼吸が合わず、ボールを失う場面も目立った。しかし、これがBチームであり、シーズン初戦であることを考えると、ホームとはいえ引き分けで勝ち点1を獲得したのは悪い結果ではないだろう。

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