7部からアーセナルへ、ありえない大出世の
ブラモールとは何者なのか?

  • 井川洋一●文text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

「選手たちのレベルはクレイジーなほど高かった。すべての動きがシャープで、ボールコントロールは完璧だ。でも僕は、自分の良さを出せたと思う。スピードを生かして、左SBの位置からオーバーラップを仕掛けたりしてね。ベストを尽くせたよ」

 黒縁のメガネをかけた聡明そうな青年は、2日間のトライアルをこう振り返る。その認識は間違いではなく、年明けには移籍が実現。ブラモールを初めて見たときに「アシュリー・コールを彷彿とさせる」と話していたベンゲル監督は、契約に際し、次のように語った。

「才能豊かな若き左SBだ。トップレベルの経験はないが、ファンタスティックな素質を持っている。とてつもないスピード、良質な左足、成功への強い意志。将来がとても楽しみだよ」

 100mを10秒9で駆け抜けるスピードを最大の持ち味とする一方、昨年9月のフリックリー・アスレティックとの試合ではラボーナでクロスを上げて味方のゴールをアシストするなど、大胆かつ繊細なテクニックも兼備。そして、「(一流を目指すなら)本当にフットボールを愛しているかが問われる。つまり、メンタルのテストだ」とフランス人指揮官が言ったように、このスポーツにすべてを捧げる覚悟もあり、いきなり世界有数のビッグクラブの練習に混ざっても平然と自分のプレーができる強心臓も持つ。また、彼の劇的な移籍を喜びながらも、離れ離れになることで涙を流したという家族から、しっかりと躾けられて育ったようで、こんな信じがたい状況にも浮ついたところはない。

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