あのベッカムが「話せる男」に変身。そのスピーチで聴衆をメロメロに (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「スパイクが飛んできたというのは本当ですか?」と、ムランボは尋ねた。2003年にファーガソンが怒ってスパイクを蹴飛ばし、ベッカムの美しい額に当てた一件のことだ。

「そのようですね」と、ベッカムはさらりと言った。

 しかしベッカムは、努力を惜しまない優れた戦士だから、自分の歴代の監督のことはほとんどが好きだったようだ。ベッカムによれば、イングランド代表監督だったスベン・ゴラン・エリクソンは「とても物静かな人でしたが、彼が口にすることはすべてが重要でした。選手たちはあの人のためにプレーすることを誇りにしていました」という。

「カルロ・アンチェロッティも、そういう監督でした」。アンチェロッティが2009年、ACミランの監督を辞めると選手たちに伝えたときには、カカやジェンナーロ・ガットゥーゾのようなベテラン選手が「泣き崩れた」と、ベッカムは言う。

 ベッカム自身は、監督になるつもりはあったのだろうか。

「ええ、でも、『名選手、必ずしも名監督ならず』とも言いますし。監督になりたいという気持ちは、それほど強くはありません。たぶん私は成功しないと思います」

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