あのベッカムが「話せる男」に変身。そのスピーチで聴衆をメロメロに (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 幼いベッカムは毎日、近所の公園で友だちや父と一緒に練習をした。ベッカムはトレーニングが好きだった。しかし「それも仕事のようなものでした」と、彼は言う。

「父は私のプレーについて、『おまえがいちばんうまかった』などと言うことは、めったにありませんでした。もともとそういうことを言わない人でしたが、それだけでなく私にはとても厳しく接しようとしていたのです」

 だがベッカムは、それが嫌ではなかった。彼がめざすのはひとつだけ、大好きなクラブであるマンチェスター・ユナイテッドに入ることだった(ベッカムはクラブの名を口にするとき、「マンチェスター・ユナイテッド」と敬意を込めて言い、めったに「ユナイテッド」などと略さない)。

 そのときがついに訪れた日のことを、彼は語った。ある日曜日、地元のリーグ戦を終えたあとだった。

 ベッカムの母:今日はいい試合ができて、本当によかったわね。
 ベッカム:どういうこと?
 ベッカムの母:だって、マンチェスター・ユナイテッドのスカウトが来ていたのよ。

 ベッカムは泣きじゃくった。

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