さらば日本育ちの世界戦。
トヨタ杯&クラブW杯の歴代ベスト3試合

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 その定義づけは、最後になって崩れた。鹿島の決勝進出によって、皮肉にも。そうした見方もできる。つい、もの懐かしさに襲われる。そのありがたみを痛感する。トヨタカップとして始まった、これまで繰り広げられてきたいくつかの試合が走馬燈のように蘇るのだ。というわけで、ここでは個人的に印象深い試合を3つ挙げ、懐かしんでみることにしたい。

 一つ目はトヨタカップ第6回(1985年)大会。ユベントス(イタリア)対アルヘンティノス・ジュニアーズ(アルゼンチン)だ。第1回目から5回目まで南米勢がすべて優勝。欧州勢より、南米勢の方がこの大会に懸ける意気込みが高い。当時、よくそう言われたものだが、なにより目に止まったのは技術力。それがそのまま結果となって現れていた。

 そこに登場したのがユベントス。延長PK戦勝ちながら、それまでの欧州勢に欠けていた華麗な技を随所に発揮した。中心人物は背番号10。ミシェル・プラティニだった。一番の見せ場は、アルヘンティノス・ジュニアーズに先制されるも、自らのPKで同点とした後。胸トラップ。そして右足でリフティングした後、クルッとターンし、浮き球を鮮やかな左足ボレーで叩き込んだシーンだ。しかし、判定はオフサイド。現在のルールならゴールが認められる微妙な裁定に、ピッチに寝そべって、「それはないぜ」のポーズをとるプラティニ。その姿がまた様になっていた。

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