リーガ3強時代は終わるのか。シメオネと共に熱を失ったアトレティコ (3ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 また、プレースタイルも変化した。シメオネは現役時代の自身のプレーを「歯にナイフをくわえたようなプレー」と表現したことがあるが、昨季までのアトレティコは、まさにそれを投影したようなチームだった。強大な敵の攻撃に耐え、一瞬のスキを見つけて鋭利な刃を突き刺すことで、財政面や戦力で優るバルサやレアル、バイエルンらと互角に渡り合ってきた。

 つまり、最大の武器は激しいプレスと鋭いカウンターにあったわけだ。しかし、2年連続で目前に迫っていたCLのタイトルを逃したことで、シメオネの心が揺らいだのか、あるいは周囲からの要求に応えたのか、今季は自発的なフットボールを試みている。

 逆にそれが、安定感を欠く結果につながっているように思えるのは皮肉な結果だ。アントワーヌ・グリーズマンやヤニック・カラスコなど能力が高い選手は多いが、例えば少し前のバルサのように、ショートパスをつなぐスタイルに適した中盤のプレーヤーは少ない。チームは今、最適の指針を失いつつある状態なのだ。

 クラブワールドカップの取材で来日している、スペイン・マルカ紙のフアン・イグナシオ記者に尋ねてみると、「シメオネは(ジョゼ・)モウリーニョにも通じるところのある監督だ。選手たちに多くを求める手法は、長く続けるのが難しい。モウリーニョのチームが3年目にサイクルの終焉を迎えると言われているようにね。おそらく、アトレティコの選手たちは心身ともに疲れてしまっているのだと思う」と答えてくれた。

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