清武弘嗣が悟る。「スペイン語がわからないと大事な試合に出られない」 (3ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko photo by Getty Images

 スペインに渡って半年。スペイン語の壁も清武を苦しめる一因になっているだろう。

「そうですね。監督の戦術はとても細かいので、すべてを理解できているわけじゃない。だから今日のような難しい試合、大事な試合では使ってもらえない。ドイツの時も最初はわからない部分があったけれど、試合には使ってもらえた。でも、今はチーム内での自分の立ち位置が違う。

 このチームにはいい選手がたくさんいるから。やっぱり完全に理解していないとチームに迷惑をかけることになる。そのあたりのことは苦労しているけれど、言葉は慣れていくものだと思っているし、カップ戦などで出場機会を重ねて、戦術も理解していきたい」

 そんな言葉にも不思議と明るさが漂っていた。むしろ「理解できていないから」とサラリと言い切る姿から、ある種の強さを感じた。

「どうして、試合に使ってくれないんだ」という思いだけでは、苦境は打開できない。できること、できていないこと。自分を見つめ、足りないところを探していく。そうやって、成長の糸口を見つける......そんな作業が清武を、少しずつ前へと歩ませているのかもしれない。他者との違いをアピールして強気を示すだけが、競争に勝つ方法ではない。多少遠回りになるかもしれないが、まずは謙虚に現実を受け入れる。それが清武の現在地と言えそうだ。

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