今季初アシスト。エイバル乾貴士のスイッチを入れた「岡ちゃん」のひと言 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 82分、エリア内でフリーのチャンスを手にした乾。今季初ゴールをもらったと確信したが、再びベティスの守護神がその夢を打ち砕いた。その瞬間、記者席の周囲の誰もが「ウィー」とうなだれ、何人かはこちらの顔を「残念だな。オイ」というような感じで覗き込み、こちらの反応を待っている。「同じ思いだよ」と視線で伝えるしかないのだが。

 もちろん、エイバルがリードを奪っているからこそ、日本人記者に好意的な視線が向けられていたのは間違いない。ゴールこそ決められなかったが、この日も乾は攻守にすばらしいパフォーマンスを見せ、エイバルサポーターの信頼を勝ち取っていた。日本人記者にもそんな気持ちのお裾分けが来ているのだろう。

 エスパニョール戦から5試合連続先発出場。その事実こそ乾のパフォーマンスがいいことを証明している。ホセ・ルイス・メンディリバルは、乾自身も開幕直後に経験したように、パフォーマンスがよくなければすぐに他の選手にチャンスを与える監督である。

 だからこそ乾は、こちらがいいと思った試合でも必ず反省の言葉を口にする。ベティス戦後のミックスゾーンでは、後半のチャンスをものにできなかったことを悔やんでいた。それでも乾はこの試合で、体のキレがよくなってきていることへの手応えを掴んでいる。

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