イブラヒモビッチを虜にした凄腕代理人の「交渉術」と「予知能力」 (6ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 では、何だと? 「家。ごはんを食べに帰ってくる家だ」

 彼のビジネスモデルは、オランダ・ハールレムの街にあるオフィスのつくりにも表れている。いかにもオフィスといった部屋だと、選手たちは落ち着かない。だから彼の部屋はキッチンのように作られており、隅のほうにフットボールの試合を映すスクリーンがある。棚に飾られた皿には、こう書かれている。

「リストランテ・ナポリ、ハールレム」

 一般には、どの選手と契約するかはクラブや監督が決めると思われている。だが、実際には代理人が大きな力になることが少なくない。「いつどちらに風が吹くかを、ただ待っているようではだめだ」と、ライオラは言う。

 2004年、ライオラはイブラヒモビッチを、イタリアで最も「上限を知らない」クラブであるユベントスに入れようと考えた。ライオラは半ズボン姿でトリノの街を走り回って汗だくになりながらも、モッジを相手に1600万ユーロ(当時のレートで約22億円)の移籍金で契約をまとめた。

 ユベントスでイブラヒモビッチは、ネドベドの激しいトレーニングを目の当たりにした。「大げさに話しているんだと思っていたけど、あなたが言うとおりだった」と、イブラヒモビッチはライオラに語った。

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