イブラヒモビッチを虜にした凄腕代理人の「交渉術」と「予知能力」 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ライオラとイブラヒモビッチが初めて会ったのは、アムステルダムにあるおしゃれな日本料理店「ヤマザト」だった。イブラヒモビッチはスーツを着ていた。「そうしたら、どんな奴が来たと思う? ジーンズにナイキのTシャツを着た野郎さ。テレビドラマの『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の登場人物みたいに、腹が出ていた」と、イブラヒモビッチは自伝に書いている(ライオラはスーツを着ないほうが仕事に有利だと思っている。相手が彼のことを過小評価するからだ)。

 ライオラは脅しをかけることもできるし、同情を武器にして人を説得することもできる。彼はイブラヒモビッチにはどちらが効くかもわかっていた。ライオラは日本料理にケチをつけ、6人分はありそうなパスタを食べ尽くし、きみは持っている力を出し切っていないとイブラヒモビッチをけしかけた。

 ライオラはいつも選手に尋ねる質問を、イブラヒモビッチにも投げかけた。

「世界一の選手になりたくないか? 最高に稼いで、最高のプレーを見せられる選手に」。もちろんイブラヒモビッチは、なりたいと答えた。

 この言葉はイブラヒモビッチの心に残った。後日、彼はライオラに電話して、代理人になってほしいと頼んだ。そのときの会話を、イブラヒモビッチはこう再現している。

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