イブラヒモビッチ、ポグバ、バロテッリ...移籍劇を操る大物代理人の実像 (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「同じような人間ばかりだと、その世界は弱くなる」と、ライオラは言う。「この業界がバカなのは、バカなままにしておきたい人々がいるからだ。閉鎖的な世界だが、大きな可能性を秘めているし、大変な金が入ってくる。ところが、どうしようもない連中が取り仕切っていることが少なくない」

 ライオラに言わせれば、フットボール界に数えるほどしかいない賢いエグゼクティブのひとりがルチアーノ・モッジだった。ライオラが90年代前半に会いに行ったとき、モッジはイタリアのクラブ、トリノのテクニカルディレクターだった。

 約束の時間は午前11時。時間には神経質なほど細かいライオラは、10時45分に着いた。

「部屋に通されたんだが、歯医者に来たような感じだった。25人くらいいて、みんなたばこを吸ったり、何かを読んだり、おしゃべりしたりしている。11時15分になっても、誰も現れない。そこで秘書のところに行って、こう言った。『すみませんが、モッジさんに私が待っていることをお伝えいただけませんか。あとどのくらいでお会いできるでしょう?』。彼女は私を見て言ったよ。『ここにいる方々、みなさんモッジをお待ちです』」

 まだ20代で、フットボール界にこれといったコネもなかったライオラは、帰りますと秘書に丁重に伝えた。

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