うなだれるメッシ。W杯南米予選「10番対決」はネイマールに軍配 (3ページ目)

  • 沢田啓明●文 text by Sawada Hiroaki photo by Getty Images

 前半の追加タイム、ブラジルはボランチのパウリーニョ(広州恒大)からの縦パスを受けたCFガブリエル・ジェズス(パルメイラス)がドリブルで突進して相手守備陣の注意をひきつけると、後方から走り込んできたネイマールへ絶妙のスルーパス。ネイマールが圧倒的なスピードでマーカーを振り切り、GKの逆を突いてファーサイドへ流し込んだ。

 後半の立ち上がり、アルゼンチンが必死で反撃を仕掛けるが、ブラジルは高い位置からの連動したプレッシングで対応し、ボールは持たせても決定機は作らせない。メッシへのパスコースを寸断し、ごく稀にメッシがパスを受けて前を向いた場合でも、前後左右から追いすがって決定的な仕事をさせない。

 逆に59分、ブラジルはマルセロが右サイドへ正確なロングパスを送り、レナト・アウグスト(北京国安)からのクロスをパウリーニョが強烈に蹴り込んでダメを押した。

 ブラジルの勝因は、常にコンパクトな陣形を保ち、攻守両面で連動した組織的なプレーを続け、その上に高度な個人能力を発揮したことにある。

 今年6月に成績不振でドゥンガ監督が解任され、コリンチャンスを率いて2012年にクラブ世界王者に輝いたチッチが後任に就いた。2014年W杯の優勝を逃したことで国中が自信を喪失していたが、8月のリオ五輪で金メダルを獲得したことで潮目が変わった。チッチは目指す戦術をいち早くチームに植えつけると同時に、選手との対話を通じてリザーブを含む選手全員のモチベーションを高く保ち、チームに一体感をもたらした。

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