PKを26本決められ続けた男。シレッセンはバルサの正GKになれるか (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「僕はマヌエル・ノイアーや、バルセロナのマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンのように極端じゃない。彼らは20メートルも前に出て、そこからドリブルで相手選手を抜いたりする。あれは僕のスタイルではない」

 確かにドイツは、クライフ流のGK観を究極の形にまで押し進めた。ヨアヒム・レーヴが率いる代表チームのスタッフは、ドイツのような傑出したチームに昔ながらのGKは必要なのかという議論までしている。GKをセンターバックの位置に上げ、絶対に必要なときだけゴールに戻ればいいのではないか、というのだ。

 アヤックスの正GKとなって数カ月後、シレッセンはオランダ代表としてワールドカップを戦うためにブラジルへ向かった。それまで彼が経験したことのない大舞台だった。1カ月にわたって、シレッセンはほとんどミスをしなかっただけでなく、ノイアーばりのプレーも見せた。アルゼンチンとの準決勝ではゴンサロ・イグアインやセルヒオ・アグエロをドリブルで抜いてみせた。

 しかしブラジルでのシレッセンは、もっと残念な光景によって世界のファンの記憶にとどめられた。コスタリカとの準々決勝がPK戦にもつれ込む寸前、オランダのルイス・ファン・ハール監督はシレッセンに代えてティム・クルルを送り込んだのだ。

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