コンテ監督の流儀。殺人的トレーニングで代表チームも戦術は高まる

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi
  • photo by Getty Images

 ボヌッチがボールを奪った瞬間にフィニッシュの形はピッチ上の選手全員がイメージできていた。つまり、デ・シッリョは「どのタイミングで、どこ へ動くべきか」を知っていた。同時に「どのタイミングで何をすべきか」も正しく把握していなければならない。デ・シッリョだけでなく、デ・ロッシやジャッ ケリーニ、パローロも。 重要なのは「タイミング」。ひとりでも間違えれば攻めの形は一瞬にして途切れてしまう。ミスをすれば、再びボールを失い、チーム全体が難しい局面におかれる。
 
 逆に、判断に狂いがなければ、自分たちの狙いどおりのリズムでボールを運ぶことができる。つまり、効果的な攻めが可能になる。当然、これをやられれば敵は実に難しい立場に陥る。その典型的な例が、スペインとの試合であったいくつもの場面だ。

 スペインがボールを保持する時間が長くなれば、その分、タイミングを計り違うリスクも高くなる。あの試合のスペインは、ボールを長く保持しようとする過程で少なくない「タイミングのミス」を犯していた。

 一方、攻撃においても守備においても、タイミングのミスをイタリアは一度しか犯していない。そのわずか一度の、致命的だったミス(89分スペインのDFジェラール・ピケのシュート)は、GKジジ(ジャンルイジ・ブッフォン)が止めた。
 
 端的に言えば、「アイデアはテクニックを倒すことができる」。つまり、戦術のアイデアは、時として敵の圧倒的なテクニックを上回る。これがスペイン戦の結果だったと言える。

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