コンテ監督の自負
「技術は並でも質の高いサッカーはできる」

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu 宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi
  • photo by Getty Images

 要するに、ベルギーが得意 とする後方からの組み立てをあきらめざるを得ない状況を作った。そして、ベルギー側の想像を超える距離をイタリアの選手たちは走った。おそらく、ベルギー だけでなく世界中の誰もがこれほどアグレッシブで勇敢なイタリアを想像していなかっただろう。

  そして前半32分に先制。これで試合の流れをコントロールし、終了までのシナリオをより明確に描くことができた。だが、決して守りに入ることはなかった。 「何としてでも2点目を取りに行け!」私はベンチから指示を飛ばし続けた。猛烈なプレスで敵を窒息させろ、と。スペースを消し、すべてのパスコースを切 る。きっとベルギーの選手たちは混乱に陥っていたのではないか。

――守るべき局面では必要に応じて最終ラインは4枚にも5枚にも、時には6枚にもなり、MFはスペースを埋めパスコースを切り、FWも中盤に下がってサポートに入る。つまり全員守備。それは単に人数を費やして守るというのでなく、一人ひとりの役割が明確にされていた。それは決して"カテナッチョ"ではない。

 攻めるために守る。これは実に当たり前の考え方だと思うのだが、とにかく、フランスでのアズーリを指して「カテナッチョ」とは絶対に言えないはずだ。もっとも、それでもなお、例の古びたレッテルを貼ろうとするのならば、どうぞご勝手にと言うより他ない(苦笑)。

 歴史的にイタリアのサッカーを揶揄し続けてきたフランスのメディアが、「ユーロ2016で最も美しいサッカーを見せたのはイタリア代表である」と繰り返していた。これはサッカー史において初めてのことではないか。もちろん、フランス以外にも多くの国の関係者やメディアから同様の評価を受けた。

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