久保裕也は五輪に出場できるのか。「出たい」気持ちとクラブの事情 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

 ヤングボーイズが久保を出せない理由は、もともと厳しい台所事情に加えて、エースFWが負傷、離脱したことにある。そもそも久保がブラジル入りする日程に関しても、日本側がクラブに譲歩する形で遅れていた。チャンピオンズリーグ予選もあるし、スイス国内リーグは他国に先駆けてすでに開幕している。23日に行なわれた開幕戦(ザンクトガレン戦)でも、久保は途中出場でゴールを挙げ、2-0の勝利に貢献している。

 一方、ここまである程度は譲ってきた日本側にとっては、まさに最後の最後に起きた痛すぎるアクシデントとなった。クラブにとって、一選手が離脱するくらいのことは、長いシーズンではよくあること。だが、たった18人に絞って短期決戦を戦う五輪代表が受ける痛手はそれ以上に深い。なにせ久保は予選ではただひとり全6試合に出場。ここまでチームの主軸として活躍してきた選手である。

 気になるのは久保本人の気持ちだろう。ヤングボーイズのスポーツディレクター、フレディ・ビッケル氏の「申し訳ないがクラブの利益のために判断した」という言い回しは、久保の望みがかなわないことへの後ろめたさを感じさせた。

 スイスリーグにおいて、ヤングボーイズは上位クラブではあるものの、バーゼルという絶対王者を追ういくつかのチームのひとつにすぎない。所属するほとんどの若手選手は、ここで活躍することにより、内外のより大きなクラブを目指している。そして将来的にセリエAでのプレーを希望する久保は、自身の23歳という年齢も考えて、この五輪でアピールすることにかけていた。なにしろ今年の久保の目標は「ステップアップ」なのだ。

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