月給2万円からCL出場へ。ルーマニア王者のボランチ、瀬戸貴幸の冒険 (4ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao

 29歳のパイエは昨季ウェストハムで大活躍をしたものの、フランス代表ではユーロ開幕前までレギュラーでないのはもちろん、メンバー入りが確約さ れた選手でもなかった。それが開幕戦で値千金の決勝弾を挙げると、一気に攻撃の中心選手となり準優勝に輝いたフランス代表を引っ張る存在になったのだか ら、まさにワンプレーで人生を変えたとも言えるだろう。

 瀬戸は現在、アストラの一員としてスロベニアでキャンプ中だ。1つ気がかりなの は、瀬戸は昨夏、一昨季のヨーロッパリーグでの活躍もあって、トルコリーグ1部のオスマンルスポルへ2年契約で移籍したものの、トルコでは出場機会に恵ま れず、冬にアストラに復帰したという経緯があるということ。瀬戸の希望は「このままアストラに残ってCLに出ること」だが、クラブ事情によっては急展開も 考えられなくはない。

 ただ、そんなことを心配しても意味はない。

 子どもの頃にレアル・マドリードに憧れ、欧州でプレーすることにこだわって単身日本を飛び出してきた"無名"の選手にとって、来るCL予選は人生最大の大勝負となる。

「J リーグにはまったく興味はないです。今年30歳になりましたが、世界を見れば35~36歳でもバリバリやっている選手はいる。数年前までははるか遠い目標 だったのが、あと一歩のところまできた。そういえば欧州に来てから、日本人選手がいるチームと公式戦で試合をして出場したことがないので、それも楽しみで すね」

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