「敗北を運命づけられた国」ポルトガルがユーロで果たしたリベンジ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 だからユーロ2016の決勝で試合開始からわずか25分に、フランスのディミトリ・パイエのタックルを受けたクリスティアーノ・ロナウドが負傷退 場し、主審のマーク・クラッテンバーグがフリーキックさえ与えなかったとき、ポルトガル人は再び陰謀説を持ち出そうとしていた。今回も、もっと裕福で力の ある国が、審判と結託して俺たちを追い落とす気だ......。しかし今振り返れば、C・ロナウドのケガがポルトガルには逆にいい方向に働いたかもしれない。

  C・ロナウドはこの大会のほとんどの時間、チームメイトたちより20メートル前方にどっしり構えていた。ディフェンスはめったに手伝わず、攻撃はすべて自 分で終わるよう求めた。速さにも連携にも衰えが見えていた。C・ロナウドが今大会で放ったシュートは、実に45本(ほとんどが空砲だった)。2番目に シュートが多かったフランスのアントワーヌ・グリーズマンは、28本にとどまっている。

 確かにC・ロナウドは、ハンガリーとウェールズと の試合で重要なゴールを決めた(どちらも強豪国とは言いがたい)。しかし決勝ではC・ロナウドに代わってリカルド・クアレスマを投入して以降、ポルトガル は守備をコンパクトに整えることができた。終盤に入ってフランスに疲れが見えてからは、より多彩な攻撃を繰り出すようにもなった。
(つづく)

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