技術でもドイツ語でもない。宇佐美貴史「2度目の挑戦」に必要なこと (3ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

 それでもバイエルンで1年、ホッフェンハイムで1年、合計してたったの2年でドイツを去ることになったのは、それぞれ異なる理由がある。バイエル ンから出されたのはその時点での彼のプレーに関する問題であり、ホッフェンハイムを出たのはコミュニケーションの問題だと見る。

 バイエル ンでは、重要なプレシーズンマッチ、アウディカップの決勝バルセロナ戦で先発フル出場を果たすなど、着実にアピールし、チャンスも与えられていた。そして 公式戦でもチャンスは巡ってきた。11~12シーズンの開幕戦でボルシアMGに敗れ、迎えた第2節ヴォルフスブルク戦。宇佐美は69分、トーマス・ミュ ラーとの交代でピッチに立っている。アウェー戦でスコアは0−0。2連敗は絶対に避けたい状況での投入だから、期待値の高さがうかがえた。

 試合は後半ロスタイムに入り、バイエルンが待望の先制ゴールをあげる。だがその直後のことだった。宇佐美が自陣でボールを持ち仕掛けるのだが、すぐに奪われてしまう。このプレーが原因で、マリオ・マンジュキッチにシュートまで持っていかれた。

  名門、強豪とは厳しいもので、ミス、特に禁じられたミスは絶対に許されない。このシーンでいうと、自陣で身勝手に仕掛け、しかも相手のポジショニングへの 甘い判断からボールを奪われてシュートまで持っていかれたということに対して、指揮官ユップ・ハインケスは容赦なかった。試合終了目前でありながらすぐさ ま交代を命じた。宇佐美にとって途中出場途中交代という、ほろ苦いでは済まされないデビュー戦となった。

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