鈴木大輔が語る、スペイン2部リーグの現場で何が起きているのか (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 徹底的な実力主義。リーガという修羅場では、その競争原理が確立されていた。

「自分も累積で出場停止になったら、ポジションを失うかもしれない、と思いました。とにかく気が抜けない。試合だけでなく、日々、精神的にも肉体的にもヒリヒリした戦いでしたね」

 鈴木は総毛立つような戦いに身を浸した。その4カ月間は濃密で、激動だった。

  スペイン語通訳はあえてつけていない。家庭教師を雇い、積極的コミュニケーションで耳を慣らした。ピッチでのチームメイトとの会話や日常のやりとりはでき るようになった。社交的性格で、付き合いに垣根を作らないのも功を奏した。一方、昨年に入籍したばかりの愛妻との間に、最終節を戦った3日後の6月7日に は第一子を授かっている。

 彼は人生のど真ん中を走っていた。

「チームに入ったときは、町を歩いていても、アジア人がいるな、くらいに見られていました。誰にも知られていなかった。それが、試合に出て結果を残すたび、自分をチームの一員として見てくれるようになった。それは自分が積み上げたものかなと」

 鈴木は1部昇格をかけたプレーオフを前に気力を充溢させていた。
 
 しかしプレーオフという決戦には、陳腐な表現を使えば"魔物が棲んでいた"のである。

 リーグ戦3位で挑んだ1部昇格プレーオフの最初の相手は6位のオサスナ。リーグ戦で完封勝利した相手だった。鈴木自身、会心のゲームをした記憶があり、苦手意識はなかった。

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