EURO珍事。敗者を気づかうアイスランドサポーターがいい人すぎる

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 そのほとんどが代表チームの青いユニフォームを身につけていたが、その背番号は様々だった。通常、ファンのレプリカシャツは、チームの中心選手に 人気が集中するもの。しかし、アイスランドのファンにはそれぞれにお気に入り選手がおり、代表選手23人が等しくサポートを受けているようだった。DFカ リ・アルナソンからは、「来ているファンの半分くらいが知り合い」というコメントが飛び出した。セミプロを含めサッカー選手が400人しかいない国ゆえの ことなのかもしれない。

 イングランドに歴史的な勝利を挙げたアイスランド人ファンは、スタジアムでひととおり喜び終えると、シャトルバス で市内に戻り、そのまま静かに宿泊先へ帰っていった。欧州のサッカーファンは、勝っても負けても試合後にスタジアム外でバカ騒ぎをすることが珍しくない。 ましてや初のベスト8進出を決めたとなればなおさらだ。

 だが彼らは、街行く人々から次々と祝福の言葉を掛けられても、静かに、誇らしそうにそれに応えるだけで決して大騒ぎはしない。

「スタジアムで喜んだし、もう夜も遅い。それにイングランドの人たちが落ち込んでいる前であんまり喜べないよ」と、あるファンは語っていた。欧州サッカーファンの常識を覆すアイスランド人ファンの慎ましさは、非常に新鮮だった。

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