優勢なのに負けたドイツ。サッカーはうまいがゲルマン魂が足りない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

グリーズマンの追加点を祝福するフランスの選手たちと、呆然とするノイアーグリーズマンの追加点を祝福するフランスの選手たちと、呆然とするノイアー

 マヌエル・ノイアーとアントワーヌ・グリーズマンが対峙する姿を見て想起したのは、今季のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝だ。下馬評で5~6番手だったアトレティコ・マドリードと、バルセロナとともに本命に推されていたバイエルン・ミュンヘンの一戦。

  その第2戦で、通算スコアを2−1とする決勝ゴールを叩き込んだのがグリーズマンだ。カウンターからコケ、フェルナンド・トーレスとの絡みで抜け出し、ノ イアーをかわして放った一撃である。番狂わせを成立させた価値あるゴール。グリーズマンはその試合で痛快劇の主役になっていた。

 ドイツ対 フランス。前半のロスタイムに入るまで、フランスはドイツに思いっきり押し込まれていた。ほぼ一方的に。ピッチいっぱいに選手が散り、パスコースがいくら でも見出せる鮮やかなサッカーをしていたドイツ。フランスが出たとこ勝負、行き当たりばったりのパスワークだったのに対し、それは計画的だった。

 意図的にボールを運び、フランスを窮地に追い込んでいく。3−5−2を採用した準々決勝イタリア戦のような守備的サッカーではもちろんなかった。試合は、ドイツにいつゴールが生まれても不思議のない状態にあった。敗戦のストーリーは考えにくかった。

1 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る