レナト・サンチェスは12年前のC・ロナウドより上。ポルトガル4強

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 その彼を、フェルナンド・サントス監督はこの日、頭から起用した。この決断が奏功した試合。ざっくりひと言で言えばそうなる。

 先制点を奪われ、危なっかしい展開に誘い込まれそうなポルトガルに、レナト・サンチェスがこれまでにはない勢いを与えていたのは確かだった。前半33分、レナト・サンチェスは、中盤のアドリアン・シルバから右サイドでボールを受けると、前方を行くナニに縦パス。ヒールでのリターンを受けると、おもむろにボールを右から左に持ち替えた。このワンアクションだけで、シュートコースが生まれた。

 この日のハイライトシーンとなる、同点ゴールの瞬間だ。レナト・サンチェスを従来通り、後半なかばから投入していたら、ポルトガルがこのタイミングで追いつけていたかどうか怪しい。

 延長120分間の戦いを経て1-1。試合はPK戦に委ねられることになった。そしてレナト・サンチェスは、ポルトガルの2番手のキッカーに抜擢された。弱冠18歳に、ベンチは大役を任せたわけだ。

 代表選手として120分の戦いは初めてだろうし、大一番におけるPK戦も初体験だったはず。実際、終盤の彼は、体力的にきつそうだった。同点弾を決めた頃の勢いはすっかり失われていた。PK戦。クリスティアーノ・ロナウドの次に登場した18歳に、一抹の不安がよぎった。外してしまうのではないか、と。

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