ノスタルジックな展開。英国勢同士の無骨な戦いはウェールズに軍配 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Hara Etsuo

 要するに、徹底して守りを固め、ロングボールに頼った攻撃でチャンスを待つ。そうした試合の進め方をするしか術(すべ)がないのである。ガレス・ベイルをはじめ、中盤から前にタレントを擁するウェールズのほうが、いくらかは攻撃の組み立てができていたが、率直な印象は五十歩百歩といったところだった。

 こうしたチームは、強い相手と対戦したときには魅力が存分に発揮される一方で、同タイプと対戦すると、何も起きないまま、時間だけが過ぎていく。そんな試合になるのも、十分に予想できたことではあった。

 現代サッカー的な評価に照らせば、おもしろい試合になるはずのない顔合わせだったし、事実、そうなった。

 だが、小細工をしない(できない)選手たちが見せる、ただひたすら蹴って、走って、体をぶつけ合う無骨なプレーの連続は、これはこれで魅力的だった。

 下手にシャレたことをしようとすると、むしろ得点の可能性は低下する。それならば、シンプルにロングボールやアーリークロスを蹴って競り合い、首尾よくセカンドボールを拾えれば、チャンスの糸口が見える。そんな内容の試合は、少々ノスタルジックな気分にさせられる、昔ながらのイギリスらしさに満ちていた。

 いわゆる「おもしろい試合」や「いい試合」とは違っていたが、これはこれでサッカーの原点を見ているようで楽しめた。

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