首位で決勝T進出のフランス。「特殊なサッカー」は強豪国に通用するか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 フランスは、82年スペインW杯、86年メキシコW杯ともに準決勝で西ドイツに敗れている。しかし、フィジカルに優れた勝者を悪役にする魅力的な技巧を備えていた。柔よく剛を制することはできなかったが、ドイツではなく、フランスのサッカーに傾倒する日本人は多くいた。

 それから30年経った現在のフランスに、当時の面影はもはやない。コクやうま味成分を感じないサッカーに変貌を遂げている。スイス戦を見てつくづくそう思った。ひたすら硬い肉を食わされている感じ。むしろスイスのサッカーの方に食指は動かされた。

 フランスのサッカーは、ともかくフィジカルだ。よく言えばダイナミックだが、悪く言えば非論理的。展開力ゼロ。体力で圧倒し、その勢いを最大の拠りどころに、攻めきってしまおうとする強引な方法論だ。その軸になるのがポール・ポグバだ。相手GKをアタフタさせたり、バー直撃弾を放ったり、この日も大暴れ。こちらの目を釘付けにした。

 同じくインサイドハーフ役で先発を飾ったムサ・シソコもポグバ系。つまり彼らがゲームメイクを担当したわけだが、これでは豪快さは演出できても細工はきかなくなる。

 フランスの攻撃陣の中で唯一、技巧を備えている選手はアントワーヌ・グリーズマンだ。彼にボールが収まると瞬間、うま味成分を感じることになるが、彼はゲームメーカーではない。4−3−3の右ウイングだ。にもかかわらず、真ん中に入り込み中盤選手のようにプレーする。そうした時間が圧倒的に長い。

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