老獪さ全開。「つまらないサッカー」のイタリアがユーロをおもしろくする

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Hara Etsuo

 個人的に言えば、イタリアのサッカーがおもしろいとは思わない。こんなチームばかりになったら、大会は退屈な(例えば、イタリア-スウェーデンのような)試合ばかりで埋め尽くされてしまう。

 しかし、大会全体を俯瞰したとき、こうした戦い方をする強いチームがあると、優勝争いは俄然おもしろくなる。

 競馬に例えるなら、追い込みタイプに有力馬が偏るなかにいる、力のある逃げ馬。楽に逃がしてしまえば、そのまま逃げ切られてしまう恐れがある一方で、自分の特徴を捨てて捕まえに行けば、今度はこちらが自滅してしまう恐れもある。この一頭の存在が、展開予想を難しくさせる。

 イタリアの好調は、優勝候補に挙げられている国にとって相当に厄介な、頭痛の種になっているはずだ。

 イタリアは順当ならグループEを首位で通過するはずだ。そうなると決勝トーナメント1回戦の相手は、グループDの2位。恐らくチェコか、クロアチアになるだろう。

 いずれも攻撃に持ち味があり、侮れないセカンドグループの伏兵だが、むしろ実力が離れ、弱者の戦いに徹するような相手のほうが、今のイタリアにとってはやりにくい。一見厳しい組み合わせも、運が巡ってきていると言えるのかもしれない。

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