老獪さ全開。「つまらないサッカー」のイタリアがユーロをおもしろくする

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Hara Etsuo

 チャンスは作れなくとも、相手にも作らせない。90分間での枠内シュートがイタリア3本、スウェーデン0本という数字が、いかにイタリアの思い通りに試合が進んでいたかを物語る。

 これでイタリアは2連勝。勝ち点を6に伸ばし、決勝トーナメント進出(グループEの2位以上)を決めた。

 率直に言って、おもしろい試合ではなかった。際どいシュートが放たれる場面はほとんどなく、退屈な時間ばかりが続いた。

 とはいえ、それは対戦したふたつのチームのかみ合わせの悪さに原因がある。

 イタリアもスウェーデンも、自力で何かを起こせるチームではない。相手が前に出てきてこそ、味が出る。特にイタリアにはその傾向が強い。スウェーデンのように、ボールポゼッション率では上回りながら重心は後ろに下がったままで、攻め手がないようなチームとは相性が悪い。

 結果的に「引き分けでもいい」という余裕が勝ちに結びついたが、勝たなければならない試合だったらどうなっていたか。少なくとも、これほど落ち着いては試合を運べなかったに違いない。

 だが、裏を返せば、スペインやドイツのようなボールを保持して全体を押し上げ、前に重心をかけてくるチームとの相性はすこぶるいい。ベルギー戦の勝利は、それを証明する材料のひとつだろう。

 ましてスペインやドイツが、ポゼッション率こそ高いものの、決定力という点に少なからず不安を抱えていることは、イタリアにとっては好都合だ。

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