老獪さ全開。「つまらないサッカー」のイタリアがユーロをおもしろくする (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Hara Etsuo

 ボールがタッチを割り、スタジアム全体がふっと息を抜いた瞬間だった。

 DFジョルジョ・キエッリーニのスローインをFWシモーネ・ザザが頭でつないだボールをFWエデルが拾うと、ドリブルでスルスルと抜け出し、そのままゴールを決めてしまった。まさに電光石火。一瞬の出来事だった。

試合終盤、FWエデルのゴールでイタリアがスウェーデンに勝利試合終盤、FWエデルのゴールでイタリアがスウェーデンに勝利 それにしても、この手の試合をさせたらイタリアの右に出るものはいない。

 まずは3バックというより、実質5バック+3ボランチで守備を固める。攻めるときもリスクを冒さず、シンプルに相手DFラインの背後へボールを入れていく。あまり得点の可能性が感じられない攻撃ではあるが、それも承知のうえに違いない。

 前に当コラムで「スイスの攻撃にワンタッチパスを使った崩しがない」と書いたが、それとは対照的にワンタッチをどんどん使ったのがイタリアだ。それらほとんどすべてが通らなかったのだが、それでも躊躇なく、ワンタッチで裏を狙ったパスを出していた。 

 裏に蹴っている限り、相手に奪われてカウンターを受ける心配はなく、それが10回に1回でも通れば決定機につながる。1本1本のパスを取り上げれば、キックの質、タイミングともにほめられたものではないが、それを続けられる潔さは、もはやすがすがしい。

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