ウェールズに逆転勝利も、見えてしまったイングランドの「悲しい現実」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Hara Masashi

 イングランドの4−3−3は実際にはどんな模様を描くのか。ウェールズの3−5−2は実際には、どうなのかを伝えてくれるデータだ。ハーフタイムにそれをチェックしてみると、ウェールズのそれは5−2−1−1−1。アルファベットの「T」の字を逆さにしたような形である。

 それでいながらスコアは1−0。前半42分、FKを直接叩き込んだガレス・ベイルのゴールで、ウェールズがリードを奪っていた。

 初戦のスロバキア戦に2対1で勝利していたウェールズ。第2戦をこのまま終えれば、早くも決勝トーナメント進出が確定する。思わぬ形で先制したことで、クリス・コールマン監督に色気が出た。頭の中に逃げ切りが浮かんだ、おそらく。しかも相手はイングランド。逃げ切れば一躍、英雄だ。功名が目の前にチラついたのかどうかは定かでないが、胸の内は、いっそう引いて構えることになったそのサッカーから推察できた。

 実力的に劣るチームが、強者からリードを奪い逃げ切りを図ろうとする試合は、前日にも見ていた。スロバキアがロシアに、2対0から2対1に追い込まれたものの、逃げ切りを決めた一戦だ。しかし、スロバキアがウェールズと違ったのは、先取点を奪った後、2点目を奪いにいったことだ。終盤はさすがに弱気になり、クリンチに逃げようとしたが、もしその2点目のゴールがなければ、同点はもちろん、逆転を許していた可能性は高い。

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