ウェールズに逆転勝利も、見えてしまったイングランドの「悲しい現実」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Hara Masashi

競り合うベイル(左/ウェールズ)とルーニー(イングランド)競り合うベイル(左/ウェールズ)とルーニー(イングランド) どっちもどっちだ。勝つには勝ったイングランドだが、ウェールズとの戦力差、国力差を考えれば、そのギリギリすぎる勝利についひと言、言いたくなる。大苦戦。決勝ゴール兼逆転ゴールが後半ロスタイムというのは、あまりに遅い。

 ウェールズも健闘空しく敗れたという感じではない。もう少しキチンと攻めていれば、と言いたくなるほど、イタリア人も驚くような守備的なサッカーをした。34対66というボール支配率の偏りが、この試合をややこしいモノにする原因になっていた。

 Jリーグではかなりの頻度でお目にかかる3バックだが、今回のユーロでは少数派だ。僕の確認した限りイタリアとウェールズぐらい。もちろん3バックと言っても守備的なものから、攻撃的なものまで各種あり、十把一絡げにして語るのはナンセンスだが、両国のそれは守備的サッカーの範疇に収まるものだ。3バックと言いながら、5バックになりがちなサッカー。5バックになることを肯定するサッカーだ。後ろに下がり、ゴール前を固める戦法であって、高い位置からプレスをかける作戦ではない。

 記者席に備え付けのモニター画面には、戦いの模様をデータで示すチャンネルが用意されていて、各選手が実際に動いた足跡の平均的なポジションを示すアクチュアルフォーメーション(実際の布陣)をチェックすることもできる。

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