タラゴナ鈴木大輔、1部昇格ならずも「ファンが残れと言ってくれた」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 その後、ナスティックが押し戻すが、得点は相手に落ち着きを与えていた。攻撃が単発になり、後半になると焦りが出てくる。そして後半55分だ。ナスティックのマジンダが深い位置から強引に前線へ入れた楔(くさび)をインターセプトされ、ショートカウンターでラインを突破されてしまう。デ・ラス・クエバス、メリーノとつながれてのハビ・フラーニョの左足一閃に、ナスティックは希望を砕かれた。

「メリーノはファウルでないと止められなかったっすね。2点目も、完全にシュートと読んでブロックに行ったんですが、ヒールで落とされてシュートを打たれて。いつ、後ろを確認したのか? 自分は見えなかったです」

 結局、ナスティックはさらにメリーノにとどめの一発を叩き込まれ、1点を返して3-2とするも、大勢に影響はなかった。

「試合終了の瞬間は、終わったな、それだけでした」と鈴木は頬をなでる。

「何も考えられず、頭がボーッとして。周りは泣いている選手も結構いて、でも俺は泣くほど悔しくもなく。満足はしていないけど、やり切ったかなというのもあって。試合後にスタジアムの外に出ると、ファンの人たちに囲まれ、労(ねぎら)ってくれて、来季も残れ、と言ってくれたり。それは自分がこの4カ月で積み上げたものなんだと思います。それでも昇格できなかったわけだけど、まだ試練が必要だったんだ、と。それは自分らしいというか、これから大きな成功を収めるための苦しみだと前向きに捉えています」

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