ユーロならではのB級好試合。大舞台初登場のアルバニアが大健闘

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 あまりにもフレンドリーな雰囲気なので、ネットで調べてみた。ガシとは何者かと。米国メジャーリーグサッカーはコロラド・ラピッズに所属する27歳。だが、その前はバーゼルに所属するなど、スイスリーグでプレーしてきた経緯がある。

 つまり、ノーサイドを彷彿とさせるほのぼのとした美しい光景には、それ相応の理由があったのだが、このフェアなムードは試合中にも至るところに見て取れた。退場者は出したものの、悪質な反則はほぼなし。どちらか反則をした方が、「すまん」と声を掛けるシーンに再三出くわす清々しい試合でもあった。

 ずる賢くない感じは、むしろスイスの方に見て取れた。そしてそれはともすると素人臭くも映った。スイスは前述の通りここ10年、15年で欧州の中堅国に定着した国だが、いまでは伸び悩み傾向にある。

 右肩上がりではなく現状維持。活きのいい若手も少ない。この試合では決定的なシュートを何度か外したハリス・セフェロビッチぐらいだろう。8年前にユーロを共催した隣国オーストリアの方が、むしろタレント豊富。対照的な関係になりつつある。

 2年前のブラジルW杯で存在感を発揮し、その名をアピールしたジェルダン・シャキリに、独特の雰囲気とキレがすっかりなくなってしまったのはどうしたことか。シャキリの両親はアルバニア人。アルバニアの国籍も持っている。活躍できなかった理由は、その微妙な生い立ちに関係しているのだろうか。

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