EURO2016、フランス人は愛想を尽かした代表チームを再び愛せるか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper   森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ドイツ人が「フランスで神のように暮らす」と言うのは、こういうことなのだ。

 僕たちはワールドカップを取材するために、フランスにいた。夜に試合があるから、朝はゆっくり起きる。リヨンの小さな広場でクロワッサンを食べ、コーヒーを飲みながら、ピンク色のスポーツ紙『レキップ』を開く。あるいはマルセイユのプールサイドにあるレストランで、ブイヤベースをランチに食べる......。

 あまりにすてきな日々だったから、大会が終わってロンドンのオフィスでの仕事に戻ると、体と心が耐えられなくなっていた。ワールドカップが終わって1カ月後、僕は仕事を辞めた。2001年には小さなアパートをパリに買った。今もそこに住んでいる。そのアパートで子どもたちが生まれ、学校へ行くようになり、僕は今この記事をその部屋で書いている。

 今度のユーロも、若い外国人の人生を変えることがあるかもしれない。スタジアムではセキュリティーチェックの長い列ができるだろう。しかしフランスでのすばらしい毎日が、そんなマイナス面を打ち消してくれることを祈りたい。

3 フランス人が再び代表をサポートする

 フランスのファンと「レ・ブルー(フランス代表)」の関係は、2010年6月に南アフリカのリゾート地クニスナで最悪になった。ワールドカップ期間中だというのに、選手たちがトレーニングをボイコットしたのだ。

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