優勝オッズ1位の開催国フランス。中盤には欧州屈指のスーパーコンビ (4ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by Panoramic/AFLO

 しかも守備の要となるはずだったセンターバックのラファエル・バラン(レアル・マドリード)の故障離脱に続き、ジェレミー・マテュー(バルセロナ)も故障によりメンバー外に。ロラン・コシエルニー(アーセナル)の相棒が定まらないという緊急事態に、一時はドーピング処分が解除されたママドゥ・サコー(リバプール)の緊急招集も噂されたが、結局デシャンは経験豊富なアディル・ラミ(セビージャ)と若いサミュエル・アンティティ(リヨン)をメンバーに加えて開幕戦を迎える決断を下した。

 この4年間、ディフェンスの固さを身上としていたデシャンにとって、開幕直前でそのコンセプトが揺らいでいるという現実は受け入れがたいものがあるに違いない。この問題を放置したままタイトルを獲得できるほど甘い世界ではないことは、指揮官も重々承知している。大会期間中に試合を重ねながら修正できるかどうかが命運を分けそうだ。

 そしてもうひとつ。今回のユーロは、フランスにとって自国開催である以上に特別な大会となっていることも忘れてはいけない。昨年11月に起こったパリ同時多発テロの悲劇からフランス国民が前進するために、という強い意識はチーム全体に深く染み渡っている。2010年W杯では内紛によって空中分解し、フランス国民を大きく失望させた“レ・ブルー”が本当の意味で信頼を取り戻すためにも、今大会は是が非でも、歓喜で大会を閉幕させたいところである。
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