CL決勝は負けてなお強し。闘将シメオネとアトレティコの確かな成長 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Nakashima Daisuke

 ところが、ここから怒涛の攻撃に打って出たのは、アトレティコのほうだ。レアルやバルセロナ、あるいはバイエルンのお株を奪うように、ボールを支配して攻め続けた。

 MFガビが左右へ的確にパスをさばけば、MFコケが虚をつくような意外性のある縦パスを繰り出す。単調なカウンター狙いではなく、多彩なアイディアから次々に生まれる攻撃には厚みもあった。同点ゴールが生まれそうな雰囲気は、すでに前半からピッチ上にプンプンと漂っていた。右サイドを崩して生まれたFWカラスコのゴールは、少ないチャンスを効率よく生かしたわけではなく、攻めに攻めた結果、奪うべくした奪ったものだ。

 2年前、伏兵ながら躍進したときの印象からか、アトレティコにはどうしてもカウンター攻撃を主体とする堅守速攻のイメージがある。もちろん、今年バルサと対戦した準々決勝などのように、そうした戦術を採るケースもあるにはあるが、決してそれだけに頼っているわけではない。

 レアルのゴールをこじ開けた鮮やかなゴールが、その事実を雄弁に物語っている。今年の決勝の記録を見ても、延長を含めた1試合トータルで、ボールポゼッション率でも、走行距離でも、パス成功本数でも、上回っていたのはアトレティコのほうだ(パス成功率はわずかにレアルが上だった)。

 とはいえ、アトレティコは歴史的に見て、レアルのように勝ち慣れたクラブではない。現時点での実力とは別の、長年培ってきたクラブの「格」のようなもので言えば、やはりレアルとは違う。

 少し試合の流れが悪くなるだけで、本来の力を発揮できないといったことが起こりうるが、今年の決勝もまた、そんな試合展開になりかねなかった。

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