ファン・ハールの革新的戦術も古くなり、成功は世界中にコピーされた (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 改革者が若いときに成功を収めれば、トップレベルで長く活躍することが保証される。グアルディオラはこの夏、バイエルン・ミュンヘンからマンチェスター・シティに移る。彼は45歳。過去の改革派監督の例からすれば、ピークを過ぎている。

 ヨハン・クライフやアリゴ・サッキ、ルイス・ファン・ハールは45歳までに、キャリアで最後のヨーロッパのタイトルを獲得している。戦術面ではそれほど革新的ではないが、チームをまとめるのがうまいタイプの監督(たとえばアレックス・ファーガソンやカルロ・アンチェロッティ)は、もっと長く成功を続けられることが多い。

 ファン・ハールは今、微妙な立ち位置にいる。思いを十分に果たしていない初老の「元改革者」といったあたりだ。

 彼が25年前にアヤックスに取り入れた細かなパス中心の戦術は、もう現代のディフェンスを突き破ることができない。その一方で、長く通用しているファン・ハールの革新的な戦術(たとえば、フォワードも相手ディフェンスにプレスをかけてボール奪取を狙う)は、ほぼ世界的にコピーされている。

 ファン・ハールはマンチェスター・ユナイテッドで試行錯誤を続けた。もうどうすればいいのか、わからなくなっていただろう。一方、アーセナルのアーセン・ベンゲルが持ち込んだいくつもの革新的なアイデアは、フットボール界にあまねく受け入れられている。

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