ファン・ハールとベンゲル。高齢化した「改革派」監督たちの悲哀 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper   森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 若い改革者は、監督としてのキャリアを始めるときに、もう自分なりのメソッドを持っている。ファン・ハールが1991年に40歳でアヤックスの監督になったとき、彼はすでにフットボールの世界で20年以上、仕事をしていた。「チームがどのようにプレーすべきかを完璧に把握している指導者を前にして、選手たちはちょっと大変だったようだ」と、ファン・ハールは言う。

 若い改革者は、すぐに大きな変革をもたらす。グアルディオラは37歳でバルセロナの監督になると、ボールを奪うための徹底した「プレッシング」を導入し、ウィンガーだったリオネル・メッシを3トップの中央に据えた。グアルディアオラの最初の3シーズンに、バルセロナはチャンピオンズリーグを2度制覇している。この成績はファン・ハールとモウリーニョより少しだけ上をいく。ふたりはUEFAカップ(現在のヨーロッパリーグ)とチャンピオンズリーグの両方に優勝するまで、監督就任から4年かかっている。

 世界は若い変革者が長年にわたって準備してきたことを知らないから、たいていは突然の台頭に驚きの声をあげる。モウリーニョはポルトをヨーロッパ王者にしたあと、こんなうまい言い方をした。「15年かけて、私は一夜にして成功者になった」

 ベンゲルがビッグクラブを率いるようになったのは、わりと遅い。アーセナルの監督に就任したのは46歳のときだ。

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