スペイン国王杯決勝直前。セビージャの「バルサいじめ」が冴える理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ヨーロッパリーグで3連覇を果たしたセビージャの特長はプレー強度と機動力のミックスにあるだろう。布陣の主柱となる縦のラインには高さ、強さのあるアディル・ラミ、スティーブン・エヌゾンジ、ビセンテ・イボーラらを配し、サイドやトップではベノワ・トレムリナス、ビトーロ、ケビン・ガメイロらスピードのある選手が躍動する。堅固なブロックを作り、敵の攻撃を封鎖するだけでなく、鋭い出足でボールを奪い返すと、電光石火のカウンターを浴びせる。

 その集団戦術の熟成を高めたのは、ウナイ・エメリ監督である。

「戦術家としては、ジョゼップ・グアルディオラに比肩する」と関係者の間で言われる指揮官だ。もっとも、戦術的には能動的なボールプレーよりも、受動的な守備の確立とカウンターの整備に基本がある。その点はジョゼ・モウリーニョに近いか。

「戦術マニア」の異名を取り、ディテールを重んじ、答えを求める数学者のような一面がある。祖父、父もサッカー選手で、日常にサッカー戦術があったからだろうか。もっとも、プレーヤーとしては左利きアタッカーで典型的な天才肌。エゴも強く、何度も練習で繰り返した集団攻撃でも試合になるとラストパスを渡さず、叱責されたこともあった。

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