さらばハノーファー。酒井宏樹が語った降格チームへの思いとこれから (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei photo by Getty Images

 4度の監督交代がありながらもポジションを失わなかったことは、とりわけ評価に値するだろう。監督が代わるといきなり出場機会を失う選手が少なくない中で、酒井はミルコ・スロムカ、タイフン・コルクート、ミヒャエル・フロンチェク、トーマス・シャーフ、ダニエル・シュテンデルという5人の監督から常に信頼を勝ち取ってきた。今季はドイツ代表歴もあるオリバー・ゾルクが加入してきたが、酒井の地位は変わらなかった。

 ただ、クラブとってこの4年間は下降の一途を辿る日々だった。酒井の加入したシーズンはELに出場し、リーグでは9位でフィニッシュ。その後、10位、13位と年々順位を落とし、今季は18位でついに2部降格を喫することになった。

 何が原因だったのだろうか? 様々な理由が考えられるが、首脳陣の失態が大きな要因であることは間違いない。13年の4月には酒井を獲得したスポーツディレクター(SD)のヨルク・シュマットケ氏(ケルンの現SD)がクラブを退団。シュマットケSDの退団は酒井にとっても「仲間が一気にいなくなった感じ」というほど大きかった。

 原因は、当時チームを率いていたスロムカ監督との対立だった。監督を連れてくるのがSDの仕事であることから明らかなように、本来、SDは監督よりも強い立場にある。通常、両者の間に争いが起きればクラブを追われるのはスロムカ監督の方だ。しかしクラブを去ったのはシュマットケSDの方だった。確かな手腕で10~11シーズンにはクラブを4位に導いたが、物怖じしない物言いが会長から煙たがられ、シュマットケSD自身もクラブに嫌気がさしていた。

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