「お金はゼロでもいいくらい」。乾貴士がスペインでプレーできる喜びを語る (3ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto ラファ・ウエルタ●撮影 photo by Rafa Huerta

 その夢の始まりとなるエイバルは、「サッカーをするには、最高の環境」なのだが、その他は「本当に何もない」と笑う。乾は、市内のピソ(マンション)で、独り住まいをしている。練習場には自分で車を運転して行く。通訳はいるが、ふだんは50キロほど離れたビルバオに住んでいるため、日常生活はひとりでこなしている。

 練習はたいてい午前中に行なわれるため、午後はほとんど空いてしまう。空いた時間は「ひたすら、寝ています」と苦笑するが、エイバルのホーム「イプルアスタジアム」か、あるいは家の近くでスペイン語の授業を受ける日もある。

 また、最低でも週に3回はチームメイトとランチを共にする。これは、クラブが決めている規則だ。試合前の3日間は食事の管理が行なわれ、スタジアム内にある‘チョコ’と呼ばれる食堂で、練習後に全員が顔を突き合わせて食事をとる。

 バスク地方は、スペインの中でも“美食の地”として知られており、世界有数の名シェフやミシュランレストランが名を連ねる地だ。スタジアム内にある‘チョコ’とは、バスク語でもともとは「女子禁制で男子が腕をふるう美食クラブ」を指す。

 そうはいっても、‘チョコ’での食事メニューを担当するエイバルのクラブドクターは、女性のオスタイスカ・エジアさん。そのオスタイスカさんは、「エイバルでは2カ月ごとに検査を行なって、選手の体調をコントロールしているのだけれど、タカシは好き嫌いなしに何でも食べるし、家でもきちんと米をメインにした食事をとっているのでしょう。いつも、最も優秀な結果を出すし、フィジカル面の管理はきちんとできているわよ」と、乾のコンディションについて太鼓判を押した。

「チームメイトも本当にいいので、チームに関して本当に満足しています」と話す乾だが、同じ欧州とはいえ、ドイツとスペインでは、文化のみならずサッカーもまったく異なっており、スペインに来てからその違いを肌身で思い知らされることになった。

(つづく)part.2>>

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