あらゆる人種が集う街レスターが、サッカーでひとつになりつつある (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 アジア系の女子選手の状況はもっと厳しい。レスターの女子U-11チームをコーチしているイスラム教徒のアニー・ザイディは、彼女のチームには南アジア系の子どもがひとりしかいないと言う。

「南アジア系のイスラム教徒の女の子は、屋内のスポーツをしたがる。そのほうが、彼女たちの生きる文化の中では受け入れられやすいから。女の子たちは上を目指さない。あるいは、目指すための知識がない」

 僕が今回の取材のことを外国人の友人に話したら、みんな「レスターって、どこにあるの?」と聞いてきた。あるフランス人はレスター(Leicester)を「ライスター」とまちがって発音し、アメリカ人たちは「ライチェスター」と言った。けれども今、タイトルに近づいているクラブは、町に新たなアイデンティティーを与えようとしている。イスラム教徒のスレマン・ナグディが言うように「イギリス中部のとくに大きくもない町が、ある日気がつけば世界地図に載っていた」のだ。

 マスターは、クラブの躍進が「レスターを世界中で売れるブランドにした」と語る。市議会がもうじき観光・貿易局長を任命するのも、偶然ではないのかもしれない。

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