あらゆる人種が集う街レスターが、サッカーでひとつになりつつある (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ウィリアムズの見方では、2002年にクラブが本拠地を町の中心部にあるフィルバート・ストリートからキング・パワー・スタジアムに移転したことが転機になった。新しいスタジアムは郊外の商業エリアにあり、見た目もパッとしない。だが、とウィリアムズは言う。「白人労働者層がのさばる怖い空間ではなくなった。新しいスタジアムは中立なスペースだ」

 クラブ自体、白人労働者層のものではなくなった。2010年にタイで免税店チェーンを経営する富豪のビチャイ・スリバッダナプラバが買収して以降、レスターはグローバルに展開するプレミアリーグでそれなりの役割を果たすようになり、新しいファン層を取り込んでいる。女性、中国人観光客、シンガポール人留学生などなど......。

 だがレスターでアジア系の存在が最も感じられないのは──ほぼすべてのイングランドのクラブと同じように──選手とコーチ陣かもしれない。イギリスのプロフットボール選手にアジア系がこれほど少ないのはなぜなのか。

 レスターの市議会議員で、アジア系とアイルランド系のハーフであるカーク・マスターは、身をもってこの問題を経験している。彼はウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンのユースチームにいたが、プロにはならなかった。イギリスのフットボールクラブは、昔から白人労働者階級の選手とコーチが動かしていて、自分たちのやり方を押しつけてくると、彼は言う。

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