奇跡の優勝目前。レスター市民に聞いた「レスター快進撃の秘密」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 両親は彼の趣味をどう思っていたのか。「嫌がっていた。親は私を医者にしたがっていたから」。カーンは親の束縛をはねのけ、仲間を、そしてイタリアもののデザイナーズブランドを選んだ。彼の属する「カジュアル」のグループ「レスター・ベビー・スクアッド」には、多いときで20人ほどのアジア系メンバーがいた。その数は、彼らが衝突したどのライバルグループより多かった。

 カーンのような数万人ものレスターファンが今、プレミアリーグの王座に近づいたクラブを見守っている。レスター・シティFCは1884年、聖書研究会のメンバーたちが物置小屋で創設し、イングランドのキツネ狩りの伝統にちなんで「ザ・フォクシーズ」という愛称をつけた。以来、チャンピオンになったことは1度もない。昨シーズンまでの最高成績は、1928~29シーズンのトップリーグでの2位だ。

 今季が開幕したとき、レスターの優勝オッズは5000倍だった。それが4月に入っても首位を守り、優勝まであと一歩というところまでこぎつけた。

 ロンドンから北へ160キロほど行ったあたりにあるレスターの町は、注目を浴びることに慣れていない。この町に特別なことがあるとすれば、ただひとつ、住民の構成だ。ロンドンを除くと、レスターはイングランドで最も人種的多様性に富んだ大都市なのだ。

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