バルサ、アトレティコに完敗。CL連覇を逃したメッシの「王様プレー」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki  中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

 監督のルイス・エンリケにそれが分からないはずがない。ラキティッチ、ダニ・アウベスに代わって、アルダ・トゥラン、セルジ・ロベルトを投入した後半19分の交代を見れば一目瞭然。メッシ不在で空白となっている右サイドの前方のエリアに人を配置しようとしたその采配に、バルサの問題は端的に表れていた。

「エゴイストは1人で十分」とは、ジョゼップ・グアルディオラがバルサ監督時代に述べた台詞だ。その1人とはメッシで、ズラタン・イブラヒモビッチ放出の理由でもあるとは、バルセロナの地元記者からレクチャーされた話だが、「0トップ」もその延長上にある発想だったという。

 それはメッシをエゴイストにする作戦だった。彼を0トップに置くことで、意図的に、守備をしなくていい人物に仕立て上げようとした。防御を固めるべきは、真ん中ではなくサイド。まず封じるべきは相手のサイドバックの攻め上がりとの発想に基づいていたという。

 その0トップの精神が、いまのバルサにはもはやない。エゴイストの置き場所を誤った結果が、今回の敗退劇の真実だと思う。

 試合終盤、アトレティコの左サイドバック、フィリペ・ルイスは、交代で入ったセルジ・ロベルトのボールを奪うと、ワンツーを交わしながらドリブルでバルサ陣ペナルティエリア内に侵入。アンドレス・イニエスタのハンドを誘い、自軍に2点目のゴールをもたらした。

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