岡崎慎司の証言から探る
「無冠の帝王」ラニエリ監督の正体

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke  photo by AFLO

 チェルシーを離れたのは、約12年前。52歳だった当時と比べると、ラニエリの顔にはシワも増えた。その間ビッグクラブで揉まれ、酸いも甘いも知った。むしろ苦々しい経験のほうが多かっただけに、4ヶ国を渡り歩いてマネージメント術に磨きをかけたのだろう。それは「年の功」と言えなくもないが、人として「幅」が広がったことは間違いない。

 実際、今季初めてクリーンシート(無失点)を達成した際には、選手たちにピザをおごると約束した。選手を引き連れて贔屓(ひいき)のイタリアン・レストランに繰り出し、うれしそうにピザを頬張る指揮官の姿が、そこにあった。こうしたラニエリの人間性が躍進に一役買っていると、岡崎も話す。

「今の成績が、すべてを物語っている。監督のいい性格が、結果に現れていると思う。ラニエリのキャラクターと、チームのそれが合っているのかなと。冗談を言うし、選手にもフランクな感じです。みんなに笑われながら、『うまくやってるなあ』という気がします。もちろん、厳しさもある。緊張感を持たせながら、怒るところは怒るし」

 とはいえ、選手の心を掴んだだけでは、猛者揃いのプレミアリーグで首位には立てない。堅守速攻の戦術を浸透させ、その戦い方に合ったセレクションと配置を行なった点も見逃せない。

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