シャビ・アロンソ、アルテタ...名選手を輩出するバスク「虎の穴」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 元来、アドゥリスは運動神経に恵まれている。15歳の頃にはスキーのクロスカントリーで全国大会に出場し、サーフィンやスノーボードもかなりの腕前だという。腰が強く、バランス感覚に優れ、落下点を見極める動体視力にも長じている。

 しかし彼は持っているものに慢心せず、自らの技を日々磨くことを続けてきた。

「自分は他の選手と比べて、成長が遅かった。しばらくは下部リーグを渡り歩いていた。衝動的に行動するところがあって、それでうまくいかなかったのかもしれない。でも、自分にいつも不満を持っているというか、満足しないのさ。もっと、と求める。ヘディングの技術も、バレンシアでアジャラと出会えたことで、練習からガツガツ競り合い、高められたんだ」

 アドゥリスはバスク人選手の中で身長は低いほうだが、リーガでも1、2を争うヘディングの強さを誇る。

 習熟を続ける35歳は、キャリアハイのシーズンを過ごしている。「30歳でFWは下り坂」という定評を考えれば、その活躍は目覚ましい。バレンシア戦も、雨の中でたやすくボールをコントロールできる技量は際立っていた。熟練を感じさせると同時に、基本に忠実だった。例えば体の使い方は巧みで、ボールを受ける直前にマーカーに一度、体をぶつけてから勢いを止めてブロックし、時には体を相手に預け、押してきた力を利用してくるりとターンする。ネイマールのドリブルのような華々しさはないが、基本の積み重ねの分厚さがあった。

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