シャビ・アロンソ、アルテタ...名選手を輩出するバスク「虎の穴」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「基本の大切さを日々、忘れないようにしている。例えば、跳ね返りはすべて突っ込むとか、シュートのとき軸足はしっかりとゴールの方向に向けるとか。当たり前のことだけど、意外にそういうことを忘れてしまう。ゴールを量産している選手は基本を覚えているもんだよ」

 35歳になるアドゥリスは少しトーンの高い声で言う。3月には6年ぶりにスペイン代表に選出され、イタリア戦では鋭い出足でこぼれ球を押し込み、得点を決めた。老いてなお盛んと言うべきか。

 基本を培った彼のルーツは、「バスクの虎の穴」と言われる場所にあった。

 バスク地方ギプスコア県のオンダレタ海岸からほど近い。アンティグオコというクラブの存在は、世界的にはほとんど知られていないだろう。なぜなら、育成だけに専念し、トップチームは道楽のようなもので存在していないに等しいからだ。

 アンティグオコは82年に設立。知られざる「虎の穴」と言える。ジュニア、ユース年代の選手に対してひたすらいいスカウティングをし、強くたくましく育てる。当初はアスレティック・ビルバオと提携契約を結んでいた。01年6月からは好条件を提示してきたレアル・ソシエダと契約。年間契約料は250万ユーロ(約3億3000万円)と言われる。アンティグオコの選手がレアル・ソシエダでデビューした場合は6000ユーロ、10試合出場で1万2000ユーロ、30試合出場で3万ユーロ、A代表キャップで1万5000ユーロを受け取るなど、条件は細かい。

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