バルセロナをしのぐバスクの選手製造工場、ソシエダのスビエタとは? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 寛大さ。それが優れた選手の条件の一つとなっている。

 例えば18歳の左利きアタッカーであるミケル・オヤルサバルは「次世代のスペインを担う」と言われ、すでにトップチームでレギュラーになり、ゴールも重ねている。しかし、少しも奢(おご)ったところはない。同年代の選手がいる4部のチームの試合観戦に姿を見せ、3部のゲームもはしごしていた。スタンドに陣取っていたのは彼だけではない。すでにトップの練習に合流している複数の選手たちの姿があった。

「僕らはこのチームで育ったんだ。ルーツを大事にするのは当然だよ。そして仲間は自分を助けてくれるものだし、自分もそうしなければならない」

 レアル・ソシエダの主将で、スビエタで育っているシャビ・プリエトはそう言って肩を竦(すく)めた。

 彼らは仲間との連帯感を欠かさない。プロになるには気の遠くなる競争を勝ち抜かなければならず、その現実を身に沁みて知っているからだろう。トップチームにたどり着ける選手はひと握り。それを弁(わきま)えているからこそ、たどり着いた者たちはたどり着けなかった者たちの思いも背負い、その覚悟がピッチにおける強度となって現れるのだ。

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